ふぉとde日記

思いついたことを撮ってきた写真とともに綴ります。できれば毎日シャッターを切りたいところですがマイペースにやっていきます。風景写真を中心に鉄道・風景・スナップ・Jリーグなど。たまに時事的な話題も。

「ハーメルン」から考える喰丸小

秋以降、昭和村に行けていないため、非常に寂しい年末年始。少しでも和らげるためにツタヤでDVDを借りて2014年公開の映画「ハーメルン」をみた。132分の長大作。昭和村にある旧喰丸小を舞台に繰り広げられる人間ストーリーだ。主演は西島秀俊さん。高校の先輩にあたるため勝手に親近感を抱いている笑。

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公式HPより

私が感じてきた喰丸小と映画を見て考えさせられた喰丸小を綴っていく。

 

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 私と喰丸小との出会いは2018年の11月。授業のフィールドワークで訪れたのが最初だ。当初、もっと奥地にあるのかと勝手に推測していた。実際は国道沿いに鎮座していた。昭和村に初めてきた頃のことなので、よくこんな国道沿いで廃校後40年近く残っていたなぁ、と感心した。校舎内は木の床が温もりを感じさせ、「トントントン ひそみ足」と書かれた階段では上から子供達が降りてくるような臨場感を感じた。実際に上り下りすると非常に滑る階段ですごく危ないのだが(゚o゚;; この時はたまたま会津若松写真屋さんのツアーで新婚夫婦が婚前写真を撮影しに来ていた。親戚も集まっての写真撮影だった。そんな姿を見て私は喰丸小の「意味付け」をしようとしていた。「木造2階建てのレトロさが売りの校舎。柱は継ぎ足されて使われ、今日まで受け継がれている。そして、結婚写真を撮りにくるほど観光地として村に大事な場所」と。

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 以降、昭和村に行くたびに喰丸小に立ち寄っている訳ではない。シーズンごとに立ち寄っている感じだ。毎回行くのではなくシーズンで行くので自分にとっては十分だった。夏には役場でもかかっていない冷房が入る教室がある。数少ない教室の一つ(職員室)は観光協会の事務所となっていて入ることはできない。銀杏の木のイルミネーションも始まったという。どうも、村唯一の観光地として喰丸小を見ているようになっていた。

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 映画を見た印象を書いていく。「ハーメルン」は一回見ただけではストーリーを掴むのが難しかった。場面が「喰丸小」「映画館」「居酒屋」「病院」の主に4箇所。そして時間軸となる季節は「秋」と「冬」のみ。しかも、季節が行ったり来たりする構成であった。映画を見る時、どうしても結末は気になってしまう。この後どうなるのか。ドキドキしながら見ることが多い。「ハーメルン」もそんな見方をしていた。しかし、「ハーメルン」ではストーリーにおける結末はスッキリするものではなかった。見終わった時はモヤモヤしたが、思い返して見ると、あえてストーリーはすっきりさせなかったのかとも思った。

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 映画の中で重要なアイテムであるからくり時計。綾子先生が大切にしていたのに、主人公、野田がタイムカプセルに入れて隠してしまったというストーリーになっている。このオルゴールは笛吹き男がデザインされている。それまで知らなかったのだが、「ハーメルンの笛吹き男」というおとぎ話が描かれているようだ。あらすじはハーメルンの住民が大量発生したネズミに困り、笛吹き男に退治を依頼。笛でネズミたちを集めて川で溺死させた。しかし、住民は報酬を払わなかったため笛吹き男が後日笛で町の子供達を集め連れ去ってしまった、というお話だ。喰丸小から子供たちがいなくなり廃校になった、という現実に重ねてしまうところもある。だからといってこの映画が描いている世界は廃校になったことをただ嘆いているわけではない。

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 喰丸小がそこに変わらずあることで地域の「空気感」が保たれてきた、ということがこの映画の伝えたかったことではないのか。登場人物一人ひとり異なる思いが小学校にはある。元校長には元生徒との出会いの場、住民には憩いの場、綾子先生には生徒と過ごした場、野田には先生の大事なものを隠して後ろめたさのある場。喰丸小がそこにあるからこそその思いが交わることができる。喰丸小がそこにあるからこそ、今後もいろんな出会いの場となることができるというメッセージのような気がした。そしてそれは、喰丸小という場所をただ見に来るのではなく、昭和村、奥会津という地域の持つ魅力を感じるためにある場所であるのだと思う。

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 今まで喰丸小はそれひとつで観光地として盛り上げようとしているように私には見えていた。実際のところはわからないが、ぜひ、景観も含めて守ってほしいと思うようになった。大型バス駐車場建設が始まるという話も聞いている。決まったことはどうしようもできない。しかし、映画を見て思うことは、一つの観光地として名をあげていくよりも喰丸小を含む地域のもつ空気感を感じてもらうような施策にしてほしいということだ。大型バスで来るところではないと映画を見て改めて感じた。

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