ふぉとde日記

思いついたことを撮ってきた写真とともに綴ります。できれば毎日シャッターを切りたいところですがマイペースにやっていきます。風景写真を中心に鉄道・風景・スナップ・Jリーグなど。たまに時事的な話題も。

「里山」

先日、佐藤尚先生のFBで紹介されていた今森光彦さんの記事を読んで思い出した話があるので、少しだけ書いてみようと思います。恥ずかしながら、今森さんのことは初めて知りました。

amanatoh.jp

去年の5月、塩原温泉の近くを走っていると綺麗な田んぼで田植えをしている方がいたので車を停め、声をかけて撮影させてもらいました。棚田でもないから田植え機は入れるし、田んぼ一面、全て苗は植わってるのに黙々と手作業で田植えをする姿が印象的でなぜかな?と疑問に思いながら撮影していました。田植え機では植えきれない田んぼの端っこを手作業で植える農家さんは多いですが、初めて見た光景でした。

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手持ちの苗がなくなったタイミングで新しい苗を取りに来たとき、お話を聞きました。すると

 

「苗、買うんだけど、田んぼが埋まらないともったいないから、少し多めに買うんだよ。それで、いつも少し余っちゃう。でも、一本一本に命あるものだから、余ったやつを隙間見つけて植えてんの」

 

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とおっしゃってました。確かに、植えられなかった苗が田んぼの端っこに放置されているのを見ないこともありません。農業だけで生活している方にとっては効率が一番ですが、この方は、先祖からの田んぼを守るということでやってるとのことでした。

 

そして、その後、田んぼの横に作られた石像や地蔵尊のところに案内され、こうおっしゃいました。

 

「この田んぼ作るときにたくさんの小さな命を埋めてしまった。だからこうして、命を償う意味も込めて地蔵さんとか自分で設置して来たの」

 

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今森さんの記事にもあるように、田んぼがあることでそこにたくさんの生き物が住み着きます。でも、この農家の方は、そんな田んぼを作ることでなくなった命のことまで考えていらして驚きました。

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その後、こう続けました。

 

「桜って、田んぼの近くに多いでしょ。それって、死者の魂が桜を目印に山から降りて来て、ちゃんと作付けをしてるか見にくるから。その先祖におもてなしをする意味で花見をしていた。修験道のだとこう考えられてる。」

 

田んぼも、桜も、命も、全て繋がって考えるともっと視野が広がるんじゃないかな、と話を聞きながら思いました。逆に、そのようなつながりを感じる機会って実は都会で生活していると日常生活の中でほとんどないな、と寂しい気持ちにも同時になりました。

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大好きな昭和村も含めて、農村を撮ることって、絶景を撮ることとは全く違うと思います。同じ、自然風景でも背景にあるものが違う。それって、人間が生活しているかどうか、人間がいろんなものを結びつけて考えてその地域の生活を持続させているのか、ということだと思います。その姿が「里山」という形で私たちの目に見えているのではないでしょうか。そんな「里山」を撮るときは小さな命から雑木林が地面まで届かせる光の量、生活の中に取り込まれている自然を表現していきたいものです。自分自身、勉強不足ですし、家を出たら自然との「共有地」が広がっている生活をしていないので、その感度は里山に暮らす人に到底及びません。それでも、自分なりに解釈してシャッターを切っていきたいな、と今森先生の記事を読んで改めて感じさせられました。そのためには、自然を観察し、住民の方にお話を聞くしかないでしょう。コロナの状況下、撮影にすぐに行けないのでまずは、大学の図書館で今森先生の本を予約しました。(秦野の短大図書館の方にありました笑)就活用の書類を取りに行くときに借りて読んでみようと思います。今森先生には、いつか直接、お話聞きしてみたいな。シェアして下った佐藤先生には感謝です。日本にはもっと見てみたい「里山」という世界がある。時間かかってもいいからたくさん見て、撮っていきたいです。

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では。